「クリスマスツリーを処分しようと思っているんだけどね」と利用者さんに相談されました。
何年も出せていないからと聞き、遠慮なく譲り受け、わが家にやってきたツリーです。ST水野です。
ある神経難病の利用者さん、10年以上訪問しました。高齢の利用者さんをさらに高齢の奥様が介護をされていました。
奥様はとてもマメで料理上手。タッパーにつめたおかずを持ち帰らせてくださったことは一度や二度ではありません。奥様は時間を持て余すのが嫌いで、時間があったからケーキ焼いてみた、マフラーを編んでいると常に手を動かしていたい方でした。
病状が進み、利用者さんが数メートル先のトイレに歩いて行くのが難しくなりました。高齢の奥様がトイレに付き添ったり、介助をしたりするのは負担が大きく、利用者さんは数週間ショートステイを利用し、一泊して翌日はデイを利用、またショート先に戻るという生活に変わりました。この時点では、要介護度が低いため、施設入所は難しく、ショートステイを利用する決定でした。
ご本人がいらっしゃらない時に集金等の都合もあり、訪問しました。奥様の様子に驚きました。もともとスリムな方がさらに10キロ近く体重が落ちたとのこと。ダイニングテーブルの上にはスーパーで買った小さなお惣菜のパックが積んでありました。今までは見たことがない光景でした。奥様は話されました。
「自分だけのために料理はできない」
「食欲がない、全然食べる気がしない」
「薬だと思って無理して口に入れている」
奥様には私の人生の選択において相談に乗っていただいたことも多く、いろいろな面で奥様の生き方を尊敬していました。
利用者さんのわがままに応えながら、家事の合間にケアマネや病院と連絡を取り合い、薬を取りに行き、直接的な介護ではない部分が最近までは大半でしたが、奥様が利用者さんのために献身的に尽くしてきた生活の長さを知っています。奥様自身に複数の持病があったのも知っています。
介護をしていた利用者さんが家にいない状態が常になったことで、奥様の気力や意欲が一気に損なわれたようでした。
そして、奥様が利用者さんを生かしてきたのと同時に、利用者さんが奥様を生かしてきたのだなと感じました。
支えている方が支えられている、そうして成り立っている家族があるんだなと。
半年ほど歳月が流れ、利用者さんが老人保健施設に入所されたと聞きました。
奥様の状況は分かりません。自分のために生きる暮らしを取り戻しておられることを心より願っています。
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