1.今の仕事に至ったきっかけ、経緯、転職のこと、転機のこと、キャリアを振り返ると…
高校の部活のサッカーでの怪我が大きなきっかけです。足首を捻りました。診断名の記憶はあいまいで…おそらく靱帯損傷かと。その時にリハビリをしてもらい、そこでPTの仕事をはじめて知りました。その後にも左半月板損傷もやってしまい、そのためか最近膝の痛みがあります…
高校卒業後、そのまま大阪物療専門学校に入学、卒業しました。
新人からの3年半は浅香山病院に勤務しました。回復期リハ病棟専従で、脳卒中や大腿骨頸部骨折等の回復期リハで病院から在宅生活のサポートを経験しました
もともと整形外科領域のリハでの仕事を志望していました。先輩PTからお誘いがあり、整形外科河村医院(港区、地下鉄朝潮橋駅、JR弁天町駅近辺)へ入職することに。一般整形、スポーツ整形で入院、外来リハを経験。ACL、半月板損傷、肩脱臼、腱板損傷等の術前術後のリハを多く経験。あまり多くはありませんでしたが膝OA、肩関節周囲炎のリハも経験できました。外来での夜診は若いスポーツ傷害の方々が多く来院し、毎日遅い時間帯まで外来リハ業務に従事していました。8年ほど勤務して、気がつけばリハ部門で2、3番手のポジションになっていました。
結婚し、子宝にも恵まれましたが、家族がまだ寝ている朝早い時間帯に出勤し、家族が寝入った遅い時間に帰ってくる生活を続けていました。心のなかで子育てのことを最優先にしたい思いがずっと強くありました。そんな思いもあり、帰宅が遅くならなくて、今までとは全く違う在宅分野での仕事を経験してみたい。自宅での在宅リハ、生活期リハを経験してみたい、と思うようになり、アクティブへ入職することになりました。
今年の3月で入職からちょうど3年が経ちます。それまで勤務していた病院の患者様は、目標がはっきり明確でした。しかし、在宅分野の利用者さまは目標に曖昧さがあり、どのように目標を設定していけばいいのか?目標が立たないことも多々あり、そのためなかなかQOLが向上していかない…というジレンマを経験しました。そのためか、「これでいいのか?」とPT15年目を迎えた今も頭を悩ませています。
利用者さまの目標を設定するために、病院勤務時代は全く存在を知らなかった興味関心チェックリストを日頃から活用するようにしています。しかしながら人によっては趣味などに向かわないひともいる…何にも目標をもてないひとにはどうするか?なかなか目標がもてない人への関わりに難しさを感じてしまう自分がいます。
2.今の仕事、働き方
訪問とデイ木曜日午後。バイザーとしての業務は、2021年度から。デイの空き時間で新人指導を担当
3.仕事での苦労、醍醐味
在宅生活の利用者様は、生きがいややりたいことが少なくなりがちで、どうしても目標が曖昧になりやすい、ということを思ってしまいます。
ニーズと現状があまりにもかけはなれている人にも出会うことあります。転倒のリスク高いのに自転車駆動をしたい人、誤嚥性肺炎のリスク高い人など…そのような方々に即刻「だめ」、「できない」とするのではなく、危険への理解を促し、その理由を聴いたり、できる方法を一緒に考える姿勢を心掛けています
訪問やデイなどでは医学的情報が不足していることが多くあるのが現状です。安全かつ安心したリハ提供に必要な医学的情報を、受診時に聴いてきてもらえないことが多々あるような状況です。利用者様には、受診時に検査結果や画像写真などを印刷してもらえるよう担当医にお願いすることを提案しています。担当医とのコミュニケーションがうまくとれない利用者様は、リスク管理してのリハを進めにくいことにもなってしまうので、私たちの側から担当医などへの働きかけも大切になっています。訪問時に受診後の採血結果を見せてもらい、できる助言をして、日常生活の過ごし方や次の受診につなげるような働きかけも続けています
4.仕事の魅力、やりがい
「生活が良くなった」「できるようになった」と言われるのが、仕事のやりがいにつながっています。
機能改善がみられ、動作が良くなったことが、ご自宅という生活の場で利用者様と共有でき、実際に生活によい変化が見られたとき。
一番は機能改善。そして生活の方も見つつ…病院での経験が圧倒的に多いということもあるためか、先ずは機能改善を重視してしまいます。
生活については、どうやってアプローチしていくか?という点においては、一緒につくっていく、誘導している、よくなるよと思っても、意欲・環境面で壁、難しさが感じています。わたしが考える目標の設定が高すぎるのか?それとも利用者さんが考える目標の設定が低いのか?「そんなんいいわー」と利用者様から言われることも…(苦笑)特にリハを本人の希望ではなくご家族からの希望の方は難しいと、感じています。
日々の訪問リハ現場において、利用者様とお話しをするだけでいいのか?利用者様に何かしらかを施さないといけないのではないか?こんなんでいいのか?と正直なところ思うこともあります(汗)
5.仕事をしていくうえで大切にしていること、心がけていること、座右の銘やモットーなど
関わった時間以外に利用者が1週間をどのように過ごしていたかを毎回確認するようにしています。
訪問時に「この一週間はどうでしたか?」動作の安全確認も兼ねて、こんなことしてたのか?大丈夫か?どうかを利用者様と振り返りながら確認するように努めています。また、1日24時間、わたしとのリハ以外の時間がほとんどなので、その時間の過ごし方が身体機能向上、QOL向上にもつながるため大切かと思っています。
オン、オフの切り替えを大切にしています。家で仕事をしない、休むときは休む。そして、自己啓発を行い、あれはなぜ?なんで?とわからないことを、自分で問いを立てるようにしています。
6.家庭、育児と仕事の両立の秘訣は?
特になし。嫁さんに甘えっぱなしです(苦笑)感謝です。前の職場では帰りが遅かったですが、今では子供との時間ができて、仕事から帰ってから公園に行ってサッカーできて、ほんとにこれがいいです(笑)
7. わたしの事業所自慢
コロナ禍のため忘年会や会議などがなく、みんなで集まってお話する機会がほとんどなかったですが皆さん優しいので馴染めている?と、勝手に思っています(笑)特にOT塚本さん(堺事業所運営責任者)、デイOT井上さん(デイ運営責任者)のお二人とは、事務所やデイでお話する機会は多いかもしれません。新人指導・相談役のバイザーは今年で3年連続3年目となりました。訪問リハ業務で外に出ているため、新人さんと直接会える時間が多くはない中でどのようにかかわっていけるか、訪問リハ業務とデイ業務のなかででスキマ時間を見つけ活用、調整していくしかないと思っています。
8.わたしの療法士像
impairment機能の改善で、disability能力、handicapにも繋がりやすく、できなかったことができるようになる。動作ができるようになることで、QOLの改善にもあり、さらにしたいことが増える。それにより目標が増える。目標、生活面をからめてどのようにかかわっていくかというところに、常に着目して関わっていきたいです。
9.入職前にイメージしていたやりたかった仕事はできているか
できているとは思っている。訪問中心にさせてもらっているので現状を継続できればと思っています。
10.わたしのアクティブ自慢
ブログやホームページ等で自分の所属する事業所だけでなく、他の事業所で色々な事にチャレンジしている様子が伝わってくるところ。そういった職員や利用者様が多いというところも、自慢できるところでしょうか。またそういった環境を作れているのは良い事だなと思っています。
11.親しい人に職場を勧めたくなりますか
訪問だけでなく、病院ではできないことに色んなチャレンジをしたい方には勧めたいですね。
12.療法士人生を左右したもしくは、影響を与えた運命の人、言葉、一冊、出来事
前職場の先輩PT。整形疾患中心になりますがアプローチの仕方に影響を受けました。
13.これがなければ生きていけない
家族
14.マイブームは?趣味、関心ごとなど
ゴルフと言いたいところですが最近はあんまりできてないんです。でも何より子供との公園でのサッカー。これが何より一番たのしいんです(笑)
15.ご自身のことで、ここ最近で起こった大きなことは?
息子のことですがサッカーのリフティング200回超えたことです。かなり頑張っていて、できたときはすごく喜んでいたので僕も自分のことのように嬉しかったです。
楠本 竜也(りゅうや) さん 略歴
大阪府出身。平成21(2009)年3月大阪物療専門学校卒業。病院での勤務経験も豊富な15年目のベテラン理学療法士。弊社でも4年目を迎えて、利用者様や職場の仲間、後輩からも信頼が厚い楠本さん。新人のバイザーとしても定評ある丁寧な指導や助言で、3年連続バイザーを任されています。今後のさらなる活躍に期待大!!
■キャリアインタビューを終えて、楠本さんから■
キャリアインタビューありがとうございました。今回お話させていただいて今までなかった考えや知識を知り、とても勉強になりました。新しい考えや知識をさらに深め、経験していき成長していけるように頑張っていこうと思います
■キャリアインタビュー記事編集担当より■
「目標を持てない人にどうかかわるか?」という言葉が、楠本さんからたびたび聴かれました。そこで思い浮かんだのが“対話的関係性は双方を成長させる”(「対話する社会へ」暉峻淑子著、岩波新書、2017年)だ。対話と対話関係によって、各々の背景にある価値観、世界観、ストーリーを共有し他者理解、自己理解に近づける。これは、生活期・在宅生活の利用者支援において大切なコミュニケーション観・技術で、連携すべき職員間・他職種間の相互理解にも必要不可欠なものでしょう。
日頃の利用者様との対話によって目標を一緒に探索できているか?わたし自身もできているだろうか?自分自身の今までの利用者様へのかかわりに矢印を向けて思い起こすと、独りよがりになってなかっただろうか、利用者様に合わせ過ぎていなかったか…と、ついつい頭を抱えてしまいます(汗)
利用者様だけに、目標設定や行動変容をもとめるのではなく、医療者・支援者の姿勢も「一緒に変わろう‼」「共に成長しよう‼」へと、変え続けていかなければいけないなと、今回の楠本さんのインタビューを通してあらためて気づかせていただきました。
そのなかでも、“病気を診る・疾病・検査中心”のエビデンス・ベースド・メディスン(EBM)と、“人を診る・患者中心・対話重視”のナラティブ・ベースド・メディスン(NBM)の往来、行ったり来たりが欠かせないでしょう。
ナラティブ・アプローチを実践するには、"患者の前から逃げ出さずにいられる能力"(「ナラティブ・メディスン」医学書院、2011年、コロンビア大学のリタ・シャロン著、内科医、文学博士、倫理学者)が欠かせないとしています。そして「あなたはどんな人生を歩んでこられたのですか」という患者、利用者様の人生史への敬意を表する問いとともに。
この実践には、利用者様とのかかわりを通した実践と経験、勉強がまだまだ必要です。
訪問リハ業務やバイザー業務に忙しいなか、2回のオンラインインタビューやメールでのやりとりの時間を作って記事作成にご協力いただいた楠本さん、本当にありがとうございます。
キャリアインタビュー記事編集担当
人材開発室・心意気実践チーム・発掘あるある広報室 伊藤健次郎
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