最後に食べたものは
- info8276777
- 4月5日
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梅田のスカイビルに初めて上がりました。
お客さんの9割は外国人で、さまざまなことばが飛び交っていました。
ST水野です。

数年前より訪問していた神経難病の利用者さん。
私が訪問を開始したのは、胃ろう増設、気管切開直後でした。
胃ろうを増設し、栄養摂取のためでなく、本当に好きなものを食べればいい状態。
どちらかというと、ご本人の食べたいよりもご家族の食べさせたい希望を強く感じました。
訪問初回、少し食べてみましょうと経口摂取を慎重に始めました。
嚥下反射惹起良好、摂取後、気切孔やサイドチューブからの吸引で、食物はひけてきませんでした。
少量なら経口摂取できそうだと評価しました。
気切のため、口頭でのコミュニケーションはできません。
ご家族がわずかな首や眼瞼の動きを読み取って意思疎通をされていました。
ご家族の声かけににっこり笑顔が見られたのが印象に残っています。
経口摂取と並行して、スピーチカニューレの練習をしていた時期もありました。
コミュニケーション支援も行いましたが、振戦等あり、安定して動かせる身体の部位が少なく、接触スイッチは実用性に欠けました。
読み上げ式の50音表を試したことも。
私が、あいうえおから順に読み上げていき、利用者さんが選びたい音のときに、手指を動かす方法です。
「いちばん食べたいものを教えてください」の問いに「すいか」と返答された記憶があります。
翌週、ご家族がすいかを用意してくださり、果汁にとろみをつけて食べました。
開口制限が強くなり、途中からはスプーンではなく、3ccの小さなシリンジを歯のあいだから入れ、舌上に食物を乗せる方法で摂取。
訪問時を中心に経口摂取を行い、ご家族と外出したときに少しジュースを飲まれたりもされていました。
ゼリー、プリン、水ようかん、コーンスープ、おしるこ(こしあんをのばしたもの)、飲み物やぶどう・いちごなどの果汁にとろみをつけたもの。
ご家族がご本人の希望を聴き取り、いろいろ用意してくださいました。
フルーツが入っているような高級なゼリーよりも、スーパーのつるっとしたゼリーの方が食べやすいねと笑ったこともありました。
ある訪問日、「今日も食べられてよかったですね。来週もまたおいしいもの食べましょうね」と別れた、翌々日、亡くなられたと連絡がありました。
訪問時は変わった様子は全くなく、突然の知らせに驚きました。
私と最後に食べたのは、おしるこ、プリン、とろみ茶。
いろいろ食べたもののなかで定番の組み合わせでした。
ふり返ると、訪問した3年半以上、一度も誤嚥性肺炎にならず、経口摂取を続けられました。
最後の訪問日まで、いつものものをいつものように食べられてよかったなと思っています。
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